2026.09.14

【DJ’s CUE】#1 FELINE (PART-1)

【インタビュー】FELINEが語る、DJの現在地──小さなお城から始まった壮大な“粘土遊び”

取材・構成:高橋圭太 aka shakke
撮影:Ray Otabe, Taniura Ryuichi


──まずDJを始めたきっかけから訊かせてください。

FELINE いろんなタイミングが重なって、気づいたら始めていたというところが大きいんですけど、細かく言っていくと、子どものころ、それこそ小学校高学年ぐらいのころからクラブミュージックとは思わず、その時期は聴いていました。フレンチエレクトロとか、その辺をずっと聴いていて。10代前半をクラブミュージック漬けで過ごしていたんです。

でも、家族にそういう話をしていたわけではなくて。たまたま自分の母親の知り合いがクラブのオーナーをやっていて、高校のころに紹介してもらったんです。そこで気づいたらバイトもしていて、DJブースもあるようなところだったので、平日の営業していない日とか、こっそりブースにこもらせてもらったりして。

最初は遊びでやっていたんですけど、気づけばあれよあれよとハマりましたね。それで始めたという感じです。

───いきなり実地で、クラブの音の大きさの中でできたということですね。

FELINE そうですね。なので、環境的にはめちゃくちゃありがたい、いい環境がそろっていて。機材も当時でいうとかなり最新で。PioneerのCDJ-2000かな。Nexusは入っていたかな? くらいのやつで。

──じゃあ、もう最初からUSBで。

FELINE そうです。なので、USB以外ではほとんどやったことないですね、DJは。

──フレンチエレクトロを自発的に掘っていたということですが、10代のころ、どういう経路でそこにたどり着いたんでしょう。

FELINE そのころにはもうYouTubeがあって。関連動画から辿って、多分エレクトロニカとかも並行で聴いていたんですよね。どっちが先かは忘れちゃったけど、多分いろいろつながって、気づいたらというところだと思います。

──そこから自分で機材を触ってDJのノウハウを覚えていったと思うんですが、誰かに教えてもらったりしたんでしょうか?

FELINE そのクラブのオーナーの人が本当に良くしてくれて。私の性格的に、多分あんまり言い過ぎると飽きると思ったらしくて。

──心が折れないように。

FELINE そうですね。なので、かなり最初から放置してくれて(笑)。本当に基礎的な、このボタンを押すとこういうことが起きるよとか、ここのつまみをひねるとこういう感じでエコーがかかるよみたいな、本当に一番最初のところだけ教えてもらって。あとは自分が好きな曲を大きい音で聴くのが楽しい、みたいなところで。

「せっかく2台あるし。じゃあ混ぜてみたらどうかな」みたいな感じで、ひたすら実験していて。それで覚えていったんです。

平日週3〜4回とかで一晩中ブースにこもって、ただただガチャガチャやって、「楽しい!」みたいなのをやっていたので。

──恵まれた環境ですね。

FELINE そうですね。それがDJを始めて2〜3年間、東京に上京するまでは、そういう感じで遊ばせてもらっていました。

──練習の時間って、お客さんは入っていたんですか?

FELINE 入れてないです。完全に1人の小さなお城みたいな感じで。

──初めてお客さんの前でDJをしたときは、どんなセットだったか覚えていますか?

FELINE 覚えてます。Jamie XXの曲もかけたし、確かHABANERO POSSEとかもかけたし。今とあんまりやっていること変わらないんですけど。

ただ、圧倒的に稚拙ではありましたけど。でも、あんまり当時と好みが変わっていなくて、こういった話をするときは毎回ちょっと照れが出てくるんです。


「いい曲を知れて嬉しかった」と思ってもらえるDJに

──そこから東京に出て、いろいろな現場でプレイするようになったわけですが、ここからはFELINEさんがどのようにDJをしているのか、選曲の部分から紐解いていきたいと思います。まず自宅ではどのような環境で選曲をしていますか?

FELINE 自宅にはDJ機材がありません、悲しいんですけど。本当にいつでも欲しいんですけどね。

──一度も自宅に機材を所持したことはない?

FELINE ないですね。でも、コントローラーみたいなのあるじゃないですか。PCでSeratoとかにつないでやる、ちょっと小さめのやつ。一瞬、家にあった時期はありました。ただ、自分のではないので。

──基本的に家で練習するような環境はないんですね。

FELINE そうですね。

──普段、曲を聴いたりする環境はどんな感じですか?

FELINE 本当にお恥ずかしいんですが、スピーカーもないんですよ、家に。

──じゃあ、PCのスピーカーから?

FELINE とか。あとはイヤホン……Apple純正のAirPodsぐらいでしか聴いてなくて。あんまり家の再生環境に音質を求めていないみたいなところはあるんですけど。

──選曲には結構時間をかけるタイプですか?

FELINE かなりかける方だとは思います。過集中気味になると、とめどなく、あんまり時間の制限なくやっちゃうので。あんまりそこまで入れ込みすぎないようには気をつけているんですけど、やっぱり選曲作業ってすごい楽しくて、ハマっちゃうんですよね。

とはいえ、セットを組むタイプのDJではないので、本当にキリがないんです。いろんなパターンを考えたり、「こういう流れだったら、こういう感じの明るいパターンで何曲かバーッといこう」とか。逆に「そうじゃなくて、もうちょっと深く潜る方がいいかもしれない」とか。

そういうのをいろいろやっていくと、もう時間が全然足りないという感じですね。

──例えば直近のパーティーがあって、そこに向けて選曲したり、楽曲を購入したりすることはそこまで意識していない?

FELINE 基本的に選曲やプレイリスト的なものはパーティーごとに作っていて。なので、各パーティーごとに選曲の時間が発生するんです。

曲もパーティーに向けて買うというよりは、コンスタントに買っています。

──ざっくり平均すると、1カ月にどれくらいの曲数を購入しているんでしょう?

FELINE どれくらいなんでしょうね。多分、最低でも100曲は買っているなという感じはするんですよね。150から300超えるかなくらいで、BandcampとかiTunesをメインに買っています。

Beatportを昔はよく使っていたんですけど、私のパソコンと相性が悪くて、曲をまとめてダウンロードできなくなっちゃって。非常に大変で、使うのをやめました。

1パーティーにつき150〜200曲。選べないからこそ残す

──rekordboxでの楽曲のまとめ方についても訊きたいんですが、どのように管理していますか?

FELINE 結構いろんなタイプの方がいると思うんですけど、私は完全にパーティーごとに管理しています。

すべてのプレイリストに日付とパーティー名を入れて、場所を固定して開催しているところじゃなければ場所の名前も入れて、時系列で全部管理しているみたいな感じです。

──MP3、WAVなどデータの形式にこだわりはありますか?

FELINE ものによるんですけど。ベースミュージックのようなかなり低域がしっかり鳴っている音源に関しては、WAVでダウンロードするようにはしています。

とはいえ、「これはWAVですか? MP3ですか?」って言われて判断できるかと言われたら、正直ちょっと自信はないんですけど。

──ライブラリーの中には、MP3もM4AもWAVも混合している感じでしょうか。

FELINE 混合はしていますね。でも、ソートできるので、選曲のときにそこは一応見るようにはしています。

──キューはいかがでしょう?

FELINE キューはかなり打ちます。ホットキューもかなり打つ方です。オートループもめちゃめちゃ使います。

──キューを打つポイントに関して教えてください。

FELINE 「ここで面白い声ネタが入っています」とか、「ここでループ組むとおもろいかもな」みたいなのを、結構メモ代わりに使っています。

絶対使うわけじゃないんですけど、曲がバーッと流れていく中で、「後半にこの音入っていたらめっちゃいいのにな」みたいなのって、多分あると思うんですよ、皆さんそれぞれ。

好きな音が前半から中盤ぐらいにあって、それを後半のミックス中に使いたいから、その付近にホットキューを打っておいて、いいタイミングで戻ってループを組んで、上音だけ使うみたいなやり方をしたりとか。

でも、テクニカルなことは頻繁にはやらず、基本はメモ代わりですね。

──購入する音源に関して、「これは絶対買う」というような判断基準はありますか? FELINEさんはどういうところに重きを置いて購入を判断しているんでしょう。

FELINE 難しいな。私って迷いなさすぎタイプなんですよね。いいなと思ったらパッと買っちゃうんですよ。あんまり吟味しなくて。

仮に今パッと買った結果、使わないままどんどん埋もれていってしまったとしても、いつかの私を助けてくれる曲になり得るというか。

特にミックス制作のときって、昔の曲を一からバーッと聴き直したりするじゃないですか。そうすると、当時はそんなにハマらなかった曲でも、別のタイミングでめっちゃ好きになる曲も結構あるんです。

そういうのも込みで、「絶対にここがいいから買おう」というよりは、期待値込みで買っていることもありますね。

──ちなみに、さっきパーティーごとにプレイリストを作るとおっしゃっていましたが、1回のパーティーに対して何曲くらい入れるんでしょう?

FELINE 平均で150とか200とかになりますかね。選べないんですよね。

──自分の肌感ではありますが、多いような気がします。

FELINE でも、乱雑に200曲とか並んでいるわけじゃなくて、一応、全体の雰囲気が近いものは近めに置いておくようにはしています。

──実際にパーティーで使う楽曲は、1時間あたりどれくらいですか?

FELINE ジャンルにもよるんですけど、ハウス、ディスコ、あとちょっと耳なじみのいいテクノとかだったら20曲前半くらいですかね。

展開が多めのベースミュージックとか、ダンスホールとか、ドラムンベースとか、その辺だともう35曲とか。パパパパって感じで、ショートミックスでつなぐとそのくらいの数になりますかね。
150〜200曲を選んでいる理由は、当日絶対使うからというよりは、「このパーティーのためにこの曲を選びました」というログを残したいというところが大きいのかなと思っていて。

ジャンルを1つに特化したタイプのDJではないので、いろんなパーティーに出ていると「これなんだっけ?」みたいな、「あのときなんかこういうことやったな」みたいなことで思い出すパターンの曲とかもあって。

なので、そういうときのために選択肢を増やしているみたいなところはありますね。



「好きなものを増やせるDJ」になりたい

──ここからは、パーティー当日のパフォーマンスについて伺います。ご自身のDJとしての強み、もしくはオリジナリティを客観的に分析すると、どんな部分だと思いますか?

FELINE そうであってほしいなと思うんですけど、自分としては結構提案できているんじゃないかなと思っていて。

それを頑張ってやってきてはいるんですけど、例えばハウスのパーティーに出たときに、ハウス以外の自分がすごい好きな曲とかをいい感じでミックスできたら、まとめて好きになってくれるんじゃないかなと思って。

それをDJ始めて3年目ぐらいからそういったことを頑張りたいなと思ってずっとやっています。

好きなものを増やせるというか、「この人のDJを聴きに行ったら、なんか知らんけどいい曲知れて嬉しかったな」みたいな感じのDJだと思ってもらえていたら、めっちゃ嬉しいです。

──一晩のセットの中で、「これができたら今日はクリアだな」という合格ラインはありますか?

FELINE 合格基準はないんですけど、「自分の振る舞いがなんか良くなかったかも」って思う日はあって。

なので、下限があるみたいな感じで。安牌を取りすぎたりとか、型にハマりすぎたりすると、「ああ、全然自分じゃなくてもよかったな、この時間は」みたいな気持ちになるタイミングがあるんです。

「頭使ってないじゃん。今さっきの自分のDJ」みたいなことで反省することはあるので。

──逆説的に言えば、自分の中でワンセットの中にアイデアを組み込めた、みたいなことがある程度の基準というか。

FELINE そうですね。それでこそやる意味があるのかなっていう感じはありますね、言い聞かせているみたいなところもあるんですけど。

「音が大きすぎるのが苦手」なFELINEの音響感覚

──では、音響についても訊かせてください。DJとしてブースに立っているとき、フロアの音量感やバランスについてFELINEさんにとってベストな音響状態はどんなものですか?

FELINE 私、うるさいのが苦手なんですよね。クラブにいるのに意味分かんないこと言ってるんですけど(笑)。もともと自分の耳が高域を結構取っちゃうタイプの耳で、過剰に反応しているところはあるんですけど。なので、結構高域や全体音量を絞りがちなところがあって。

絞ったときに、それでもちゃんといいバランスで鳴ってくれていたりとか。あとは、全体のバランスで何かが埋もれちゃっていたりとか、ハイが突出しすぎているみたいなところがなければ、基本は嬉しいという感じです。

──例えば1時間プレイしたとして、その1時間の中で音量感はあまり変わらない?

FELINE でも、出したいときは出します。あえて刺すみたいなタイミングももちろんあるんですけど、いかんせん自分が疲れちゃうって部分もあって(笑)。

──ジャンルをまたいでクロスオーバーさせるときは、音量感や低音の分量なども大きく変わりますよね。その際にに気にしていることはありますか?

FELINE ベースミュージックと、例えばハウスの中でもディスコ寄りのシンプルなものとかになってくると、完全に同じ音楽のはずだけど、違う生き物って感じで。そういうのを混ぜたくなるときもあるんですけど、とにかくそもそもの出音が全然違う。ハイ、ミッド、ローの話だけじゃなくて、質感も全然違うじゃないですか。

なので、そういうときは、私はあんまりデカいほうに合わせることはしなくて、可能な限り小さいほうの音量感に合わせるようにはしています。

小さい側の音を持ち上げたときに、あんまり良くない感じになるリスクのほうが高いんじゃないかなと思っていて。それで結構、そっち側に合わせているところはありますね。

「気に入った音を抜くタイミングを忘れちゃう」

──ご自身でDJをしていて、「私、こういうことやりがちだな」というミックスの手癖や癖はありますか?

FELINE ロングミックスが好きで。CDJが2台以上ある場所だったらいっぱい使いたい、みたいな感じなんですけど、気に入った音をずっと残したくなっちゃって。

気に入った音のループをうまいこと組めて、ずっとかけっぱなしにしているじゃないですか。抜くタイミングを忘れちゃうんですよね。「この音、もう切りたくないな」って。

どう考えても、音を混ぜっぱなしじゃなくて、1つに絞ったときの盛り上がりがあることももちろん知ってはいるんですが。

最近はそういう粘土遊びみたいなのが楽しくて。昔の自分は……あのスライドパズルって分かりますか?

──数字やイラストをスライドさせて揃えていくパズル。

FELINE そう。私はスライドパズルで絵を揃えるみたいな感じでDJのことを考えていたんです。枠の中で形ができるように、それを目指してやるみたいな。

あんまり変なことをしないというか。カットインとか、ちょっと予測がしにくいことは避けようって時期があったんですけど。

そういった時期を経て、最近はスライムをたくさん集めて、でっかい丸を作るのが楽しい、みたいな状況ですね。